個別労使関係紛争の予防と解決
- ★ 労使紛争の現況
- 景気回復の低迷・格差社会の深刻化を受けて、労使間の紛争が急増(但し、労組との集団的労使紛争は減少、労働者個人との個別的労使紛争が増加)しています。
- 平成19年度に、厚労労働省が設置する全国300ヶ所の総合労働相談コーナーで受け付けた相談件数は、995,061件(解雇・労働条件引き下げ等の民事上の個別労働紛争の相談197,637件)に達し、制度開始後6年間、その件数は増え続けています。その内、法的解決の場に持ち込まれた件数は、労働局でのあっせん7,844件、労働局長の助言指導6652件、その他労働委員会の「調整」、裁判所での民事訴訟2,264件・労働審判1,494件を合算すると、その件数は、実に18,000件を超えます。なお、この中には、労働基準監督署での労働基準法関連の申告・是正勧告の件数は含まれていません。
- ★ 紛争の適切な解決は
- この現状において、一番に問題なのは紛争の長期化のリスクです。それは労使共に言えることです。とりわけ、労働審判制度のスタートも要因となって、長期化が必須である裁判所に持ち込まれる案件が増えています。もちろん、司法の場での解決を否定するものではありません。裁判を通じてしか妥当な結論を引き出せない場合もあります。しかし、労使は冷静に判断して、裁判以外の適切な解決手段を選択し、早期の解決を図ることが重要だと考えています。
- そのためには、社内に、主要な四つの施策…1・就業規則の見直し 2・幹部社員の対応スキルの向上 3・苦情処理と紛争解決スキームの設定 4・紛争予防マニュアル作成…を持つことです。また、そのような運用ができない小規模企業の場合は、紛争処理のルールづくり等も良いでしょう。
- 更には、紛争を社外で解決せざるを得ない場合は、裁判所ではなく、裁判外紛争解決制度(労働局・労働委員会等)の活用を図ることも大切です。
- ★ 当事務所が提供できる解決方法の選択肢
- 当事務所は、特定社会保険労務士としての倫理規定を踏まえて、労使いずれからの依頼も受任(→関与先の労働者からの依頼は受けられません)します。そして、依頼者の主張・利益を擁護する立場から解決の道筋を作り上げていきます。また、案件によっては、弁護士と共同で解決に当たります。
選択肢としては、次の通りです。
- 1 労働局(紛争調整委員会)・県労働委員会での「あっせん」…代理人として、申請書作成・答弁書作成・相手側との折衝・あっせん手続きへの参加等、全てプロセスを代理して対応します。
- 2 裁判所の「労働審判」「民事訴訟」「民事調停」のサポート…弁護士の紹介又は共同受任、あるいは本人申し立ての形で進めます。いずれの方法であっても、綿密に支援します。
- 3 事業主・労働者の直接交渉のサポート…裁判所・労働局等の第三者機関の関与なしに当事者間で協議して解決します。その際の法的な助言を通じて、解決を補佐します。
- 4 労働基準監督署への申告のサポート…労働基準法違反事案については、申告の手続きを補佐します。(労働者側依頼事案のみ)
なお、1の選択肢は、特定社会保険労務士のみ受任が認められており、一般の社会保険労務士の場合は受任できません。
★ 最近の紛争解決事例【労働者側申請事案】
- 事案の内容
- ☆ A社で、社員Bは、同僚Cの非常識な職務姿勢に耐えがたく、そのことを指摘すると上司Dによる嫌がらせが始まり、社長Eに訴えても、改善には時間が掛かると言われ、その結果、会社での職務遂行が困難になるだけでなく、ストレスを強く感じ、かつ身体的にも下痢・頭痛等の症状に悩まさられるようになりました。
- ☆ 社員Bの切羽詰った状況に対し、会社が示した対策は、席の位置を変えると言うだけで、何ら有効な策をとることがありませんでした。その結果、社員Bは、職場環境の改善を図り、勤務を継続していくことが困難であることを痛感し、退職を決意しました。
- ☆ 社員Bは社長Eに退職届を出しましたが、会社は退職を認めず、逆に、会社は損害を受けたと何度も謝罪を求め、社員Bの訴えをわがままな行為とし、退職届不受理・懲戒解雇を以って再就職を困難ならしめることを暗示したり、人格否定する等、終始、威圧的な態度で臨んできました。
- ☆ 社長Eと面談の結果、その威圧的な言辞に耐えられず、退職届を撤回させられました。社員Bは納得できず、労働基準監督署へ相談しました。監督署では、労働基準法の問題ではないので、個別労働紛争解決支援制度の利用を進められ、知人の紹介で特定社労士Sに相談しました。
- 解決の経過
- 1 相談を受けた社労士Sは、再度の退職届の提出を示唆し、Bは、社労士Sを同行し、会社を訪問し、退職届を提出し、「あっせん」で、この紛争の解決を図ることを会社に申し入れました。
- 2 申請人Bは、会社に対して、1) 会社は就業環境配慮義務を果たすべきであるにも係わらず、Bの改善を求める訴えに耳を貸さず、放置したことにより、Bが精神的・身体的な苦痛を負ったことに対する謝罪。2) 退職の経緯で人格を無視し、退職撤回を強要されたことにより受けた精神的・身体的な苦痛を負ったことに対する謝罪。3) 退職せざるをえない状況に追い込まれ、職を失った結果、再就職に至るまでの収入補填として、在職中の月例賃金の3ヶ月分48万円の支払いを求めました。
- 3 社労士Sは会社側代理人の弁護士と折衝し、あっせんでの解決を合意し、事前の答弁書のやり取りをして、あっせんを迎えました。
- 4 あっせんの場では、会社は、法的責任はないとして、B側の主張を全面的には認めませんでした。あっせん委員・双方代理人のやり取りの結果、極めて低額の10万円の解決金の支払いで和解合意書を締結しました。
◆ あっせんの結果だけを見れば、申請人B側としては、全く以って、低額水準での解決で『敗北』のように見えますが、申請人Bにとっては、金銭の問題ではなく、会社に対し、自己の主張を明確に行い、全面的にではないにしても、あっせん委員の理解も得られたことで、あっせん申請をして良かったという考えでした。
◆ サポートした社労士としては、低額の解決金を不可として、あっせんを打ち切り、労働審判等の場への移行もあると説明した上で、申請人の時間と費用と労力を考慮して、敢えて低額解決金であっても合意することを勧めました。
◆ しかし、この和解合意書は、重要な意味を持ってきます。申請人Bは、雇用保険の受給では、当初は「自己都合退職」「支給停止期間3ヶ月」「給付日数90日」でしたが、この和解合意書を職安へ提示することにより、会社が解決金を支払っているということは労働者の主張を認めていることになり、「特定受給者」「支給停止期間なし」「給付日数180日」に変わったのです。このように、特定社会保険労務士による「解決」は、多岐にわたる方法を駆使して、依頼者の利益を守ります。
☆ 当事務所では、個別労使関係紛争に関するご相談について、面談・電話・メールで、ご相談に応じます。初回相談(面談30分以内)に限り、無料で行います。
☆ 会社側からの依頼事例は、ブログを参照して下さい。

